「護られなかった者たちへ」 中山七里著

2011年3月11日に発生した東日本大震災後の仙台を中心とした人たちの
物語。
仙台市福祉保険事務所の課長が手足を拘束され餓死で発見された。生前は善人と評された人物だった。次の犠牲者は県議会議員。人格者と言われてきた人物だ。
警察署が犯人を追ってゆくうちに、善人、人格者は表の顔で、別の顔も存在していることが判明してくる。福祉保険事務所の課長は生活保護の査定を担当していて、上級機関からの指示をかたくなに守るタイプ。県会議員も役人をしていた頃は生活保護の責任者だった。
生活保護の受給問題で、福祉保険事務所の課長に暴力を振るったり、事務所に放火した若者が犯人と目される。おまけに容疑者は刑務所から出所したばかりだった。
小説の中でも、犯人を目される若者の心理として、8年間、塀の中で復讐を考えていたというように描写し、読者を若者が犯人だと指し示す。
生活保護を食い物にしている市民、受けたくとも受けられない市民。こういった両極の存在を対比しながら、復讐譚なのかなと想像しながら読み続けた。生活保護を受けられなかった者の復讐物語なら、起伏も感情の盛り上げも少なく、社会問題という重いテーマを扱った小説なのかと。
ベテランの小説家らしく最後に仕掛けがあった。
後ろの見開きに著者の紹介が「華麗などんでん返し」と記されている。
そうかな? WWE、エディ・ゲレロの「ズルしていただき」を髣髴とされる反則業をみた思いだ。
哀悼! 勝谷誠彦著「バカが隣に住んでいる!」読書日記は:
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